トレーニング編②
『共依存』
トレーニング編では、せめてここだけでも多くの方が見ていただければとは思いますが、上手く伝わるように書けるか不安です。
まず、昔から犬の精神状態について「分離不安」という言葉が使われてきました。
飼い主が居ないと精神的に不安定になる、依存症の一つです。
私もこれはずっと見てきていますので、ご利用時のガイドラインにも「お別れの挨拶をしないでください」と書いてあるのは、その「ガンバッテネ」が犬にとっていつも「飼い主と離れる合図の言葉」とされている場合が多いからです。少しでもその不安を減らすのは、人間が自然体であることが重要です。
犬の話で「共依存」を書いているのを見たことがありませんが、ここが重要です。犬の依存症を分離不安と称することが多いですが、ではその原因は何かといえば「飼い主が犬に依存している」ということ。そして育てられた犬も依存する。これが「共依存」の始まりだと思います。
人間の子育てをされた方は非常に理解していただくのが早いのですが、「別れの挨拶をしないでください」と伝えると「幼稚園と一緒ね」と言ってスムーズに預かれます。
また、トリミングも含めお迎えの際に出てきた犬に声をかける、過剰に表現する、そういった方も見受けられますが、犬としては基本的にその全てを「特別なもの」として認識し、やはり別れていることが異常だと教えているのとほぼイコールになります。
中にはその騒ぎ立てる愛犬を見て「マテ」「スワレ」とコマンドを使う方もいます。ただ、それは逆効果のことが多いと思います。犬がすでに興奮している状態でコマンドをかければ聞くわけもなく、ただそのコマンドの意味が薄れるだけなので私はいつも声をかけないであげてくださいとお伝えしています。
ただ、全ての犬がそうではなく、依存症の見られないような犬や、社会化されているorしていないが素質に恵まれいてどこでも明るい犬に関しては、適度に明るいお迎えをしていただきたいと思っています。
多くの犬たちが依存症を持っているように見られる陰に、飼い主側の依存症もある「共依存」これが今私の中で犬を飼う上で一番難しい問題なのではないかと感じています。
依存症の気のある(明確な線引きはありませんので、そう見えるという状態)飼い主さんの特徴を上げてみたいと思います。複数当てはまるようであれば一度お互いの距離を見つめ直してみてもいいのかもしれません。
○犬が怖がっているように見えると抱っこをする
○何か吠えていると犬に声をかける
○とりあえず抱っこする
○いってきますなどの挨拶は欠かさない
○基本的に出かける時にケージは使わない
○目線を合わせると両想い♡のような気持になる
○この文章で「わんちゃん」と書かずに「犬」と書いてあることに冷酷さを感じる
○当店の利用時に冷たい対応だと感じたことがある
○一食でも食べないと不安になる
○「甘噛み」という言葉を使ったことがある
○手作り食が犬のために一番だと感じる
○首輪はかわいそうだ
○今飼っている子の仔犬を取りたい
○サロンや病院に行く時は1秒でも早くお迎えしてあげたい
書き出せばキリがないのと、これらが共依存(の発端である飼い主側の依存)であると確実には言えないのですが、いくつか書き出しました。ただ、複数チェックが入るような場合にはその気があると言えるかもしれません。私がここで出会う犬と飼い主さんを見て、共依存かもしれないと匂う場合の特徴を書いただけですので。
共依存、これはもちろんちょっと困ったことではあるのですが、無関心よりは愛情が深すぎるが故の事なのかと思えば、犬と共に暮らすことに時代が変わってきた証拠かもしれません。
ただし、悩みごとがある中でその原因が共依存であれば、もしくは飼い主側の依存症であるならば、何が犬のために最善かを考え、その深い愛情の向け方を自制してコントロールすることも必要です。
例えば食べ物で言えば、多くの場面で飼い主さんの我慢で解決に近づくことはあると思います。
食べないから別の物を与える。
食べないからおいしいものを与える。
そうするから、余計に食べなくなっていく。
でもその原因が「フードが良くない」と考えてしまってその子に良いと思うフードを探し続ける「フードジプシー」
そしてネットを見て「良い」とだけ書いてある手作り食を真似して栄養の偏りが出来、体調が悪くなる。
もしかしたら飼い主さんも「これ、ただの我がままなんじゃないの?」と思っているかもしれません。でも、そこで一週間断食させるには自分の気持ちが優しすぎて耐えられないから、フードのせいにしてしまおう。ということもあるかもしれません。
なんにせよ、共依存の始まりは飼い主側から起こっていることは、多いと言えるはずです。
愛情を持たずに、しっかり見てやらずにネグレクトになるよりはまだマシかもしれませんが、依存症になって昼夜問わず犬のことが不安で悩み、疲れてしまっている飼い主さんと飼われている犬も、決して幸せとも言い切れませんよね。
しっかりと見てやること、犬に自立させること。
そのバランスのとり方が、もしかしたら難しいのかもしれません。
ただ、ハッキリと言えることがあります。
「犬は強い。」
犬を信じてやるからこそ、自立させてやって、お互い気持ちよく付き合えるようになりたいですね。