地域最低料金のこのお店(料金適正化の根幹)
なぜフルーツは現在の料金に変えたか。
それだけを知りたい方はこの記事のみ見れば良いというつもりで書ければと思います。
正直な所、今の他店さんの料金は知りません。
調べようと思ったこともないです。
ただ、どのお店さんとも面識はありますし、仲良くさせてもらっているので、料金が上がる際にはご連絡をしました。
「適正料金にするため、当店を離れる方もいらっしゃるはずです。自分でも他店1店舗がお休みなるだけでその受け皿として非常に忙しく、既存の方すら受けるのが精いっぱいであったので、ご迷惑をおかけすることもあると思います」
そのような中で、実際にいくらにするのと言われれば「目安ですが」、と伝えました。
ほとんどの返事は「うちの倍じゃない!」というようなもの。
しかし「ええ、でも自分は控えめに、こうしました」とお返事させてもらいました。
この料金設定、実は各段高い物でもなく、むしろ適正化が出来ているお店から見たら安い部類です。
ですので、適正料金の中で最低ラインくらいものもです。
どこかでサラッと書いたかもしれませんが、多くの「トイプードル6,000円」というのは50年以上前の設定です。
当時は給料が3万円程度だったようで、当時にしては少し高いなとは思いますが笑
しかし、現代でこの6,000円は絶対に商売として成り立ちません。
断言したいです。出来るかどうかは知りませんが、断言したい。
少なくともうちの店では成り立たなかったのです。
これを成り立たせるのであれば、現代の皮膚トラブルの多い犬を無視して原価の安い適当なシャンプー剤にする。
道具は必要最低限で犬とトリマーが死ぬほど苦労することで補う。
早出残業の手当無し。
効率最優先。
自宅開業。
このあたりで成り立つと思います。
徹底的に経費削減、最たるものとして家賃、人件費。
自宅開業で物凄く安い料金にしているお店があるとたまに聞きます。
例えば私が自宅開業したとして、料金を変えるかと言われれば変えません。
それは、同業者を潰したあとに自分も潰れるからです。
当然のこととしてお客さんは安い方が良いと思う方が多いです。
「この店が良いけど安くして」と思う方と「どこでもいいから安ければいい」という方。後者はもうどうにもならないのでほおっておくとして、前者は凄く有難いお客さんですし、可能な範囲では安く出来るように努める必要があると思います。
しかし、地代家賃が浮くからと言ってそれを料金に反映させるのは、前述後者の飼い主さんを呼び込み、自分がパンクするのです。
その後は体を壊して廃業などし、その金額に慣れたお客さんが他店に行けなくなる、値下げ交渉をする、など行き場をなくさせるのです。
人件費については、ある程度自己責任になるのですが、私はむかーし書いていたブログにもある通り「行列の出来る店は悪である」という認識ですので人を雇います。
道具についても、実は数年前まで私の道具は「スリッカーブラシ1本」「コーム」「ハサミ」「バリカン」「ドライヤー」くらいのものでした。
しかし、犬の状態、毛の状態、仕上げの速さ楽さなど考えるとブラシだけでも10数種類(ナイフなども含めると倍に)、コームだけでも数種類、ハサミも種類が増え、バリカンも今3つですがもっともっと増やしたいくらい、ドライヤーも質を上げたりなんだりと物凄い数になるのです。
犬を思えばこそ、自然と増えます。
シャンプー剤についても、全ての犬に1,2種類で足りるわけもなく、(使い方を含め)数十種類必要にもなります。
また、何より効率を上げるために腕やシステムを改善するのではなく、犬に無理をさせる、従業員に無給で働かせるなども、実際聞く話で多くあります。
ケージドライと違って犬にとってあまりにも不自然で受け入れがたい乾燥機のような機械を使ったり、「なぜ嫌がる」を解決してやらず、ひたらす作業のために我慢をさせる。
腕を上げさせるために居残り勉強させるのに残業代はつかない。
ミスは担当の責任にする。
育てる気の無い経営者による「従業員の道具化」
本当にまだまだ多くの店がそういった形を取っているというのは本当によく聞くのです。
現に、昨年は労働環境によって家庭崩壊になりそうで辞めたという方も来ました(男性だったので、まだまだ給料がしっかりしていると言えないこの店で雇うのは無責任だと思って断りました)。
今居るスタッフも、過去に「とにかく頭数をこなせ」という事だけで仕事をさせられ、疑問を感じ転職して来た者もいます。
この店では、必要な打ち合わせがあれば時間が無い時には残業代を出しつつ行います。過去には50音が出来ないスタッフに残業代を払って50音を教えたこともあります。
アルバイトでも条件を満たせば有給休暇が取れますし、申請は通ります。
お客さんと犬を思えば、シャンプー剤も高い物を使う必要があるので自然と消耗品費も上がります。
実は色々な店舗を回っている問屋さんから聞いた話、「個人経営でクレカが使える店ってあまり無いんですよ」とも聞かされました。
お店としてはマージン取られるし、現金だけであれば手間もないですしね。
でも、それもお客さんを思えば導入すべきでしょう。
施術ミスがあっても基本的にそのスタッフに経験させるという意味が必要でもない限り謝罪は全て店長や経営者のものだと思っていますから、うちでは従業員が謝罪して店長は裏で鼻歌を歌っているということもありません。
逆に褒められるのは担当者であるべきなので担当者が居る場合は店長はお褒めの言葉を受け取らず本人に聞かせるものだともしています。
私は下積みの頃、無給で他にアルバイトを探して深夜にお金稼ぎをしていましたが、それを良しとする世代でもないことは明白なのでなるべく従業員の給料は(可能であれば)どんどん上げます。
施設、設備、人件費は、正しく仕事をしようとすれば物凄くかかるのです。
それに、当店は犬に「無理な」我慢をさせて効率を上げることはしません。
必要ならばステイ時間を多くとったり、カウンセリングに時間をもらったり、お金にならないというか赤字部分を多く使います。
(語弊が起こりやすいのですが、私は「優しい、良い子良い子するだけの、ナウシカグルーマー」ではありません。これでも訓練第一に生きてきたグルーマーなので、本当に必要な場合はスパルタ方式もいとわず行います。近年、そういった子と出会う事もなくなったので穏やかにグルーミングをさせてもらっているだけです)
効率よりも経費削減よりも、全て犬のために、ひいてはそれがお客さんのためにということに徹底することで、自然と受け入れ頭数も考えるべきものになりますし、料金の適正化をしなければならなくなるのです。
念のため書いておきますが、まだ料金適正化に踏み切れていない全てのお店が「犬を無視して従業員をぼろ雑巾にして酷い労働環境、犬の負担を考えない」というわけではないと思います。
理由はわかりませんが、それで成り立つシステムがあるのでしょう。
しかし、最後に書きたいのはこの業界の未来です。
一時期専門学校の講師をして、多くの高校に学校紹介として同行させていただいて講話をさせてもらっていました。
その時によく先生方と話をしていましたが、この業界の定職率は驚くほど低いのです。
それに、自店のスタッフに同級生の話を聞いても、ほとんどが1年目で離職しています。
あまり擁護ばかりもしません。ただの根性無しって子もいるでしょう。親がアホだから下積みせずにいきなり独立しろってさせられた子も居たと聞きます。
しかし、それを含めても「経営者」「指導者」「先輩」という立場から次世代のグルーマーを育てるという人は少ないのかもしれません。
一番直近ですと、料金改定の際にお知らせを送った方からお手紙をいただきました。
「うちの子は噛むのに、フルーツさんには喜んでついていく。そういった姿を見て娘もトリマーを目指し専門学校を出ました。しかし、厳しい業界ですね。すぐに離職となりました」という内容でした。
本当に残念で悔やまれます。
現代に生きていてもスポ根こそ正義という人があまりにも多く、これからの世代の子を育てる姿勢に自分の過去を持ち出してしか考えられない人が多いのです。
ただ、広い目で見ればその経営者ももしかしたらかわいそうな人なのかもしれません。
この料金体系でしかお客さんは認めてくれない。
であれば従業員の酷使と労働環境を悪化させるしかない。
そういうことかもしれません。(もしかしたら、ね)
それも全て自分の責任ではあるのですが...
多分、私が感情でしか動かない人間なのでラッキーだったのかもしれませんが、犬と次世代の事を考え、自分がもし失敗して廃業となっても一つの石を(意思を)この地域に投げることで次に繋がる。
という事で今回の大幅な料金の適正化に踏み切れたのだと思います。
家族は私の「廃業」or「はよ給料持ってこい」を望んでいます。
自分としては、やり切ってダメなら仕方ないという気持ちで踏み出したのですが、今となっては潰れる気はさらさらありません。
必死に生き残るつもりです。
こうして12年経った今、自分と同じようにお金よりも向上心でしか行動できない大馬鹿者と出会え、この料金適正化にもご理解をいただくお客さんに囲まれ、「この店と出会えて良かった」と言ってくださる方と出会い、それを簡単に「終わったらしゃあねえ」で片づけられるものではないと感じています。
まだ赤字続きですが(ぶっちゃけ過ぎ)、必ず生き残り、この店の素晴らしい理念を理解してくれる方ともっと知り合って、もっと向上して、商売を続けることで恩返しをしたいと強く思っています。
そのために、この店の良い所をSNSに上げてくれる従業員や、お友達にすすめてくださるお客さんの存在は、ほぼそれが全てというくらいに大きな存在です。
ぜひ、この店を続けてこの店の遺志を継ぐグルーマーを生き残らせ独立させ、本当に全ての「犬好き」が幸せに生きていける未来を、共に作らせて下さい。
これで、今回の料金適正化について深く書くのは終わりにしますが、今後もブログ、インスタ、公式LINE(実は開設してます)などでこのお店のことをもっと知って、心からご理解いただける方とたくさん出会っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まだ書けそうなので、ここでやめておきます笑。
本当に長々とした前置き(グルーミング編、トレーニング編、医療編)にお付き合いいただき、ありがとうございます。